Ephemeral Reverie

Isabella Frost  |  2018

西垣龍一による「Ephemeral Reverie」|作品解説

《Ephemeral Reverie》(2018)は、音楽と語り、そして大型スクリーンに映し出される映像による複合的な作品である。さほど注目されなかった作品だが、《Curling Music》の4年前に作曲された作品として気に留めておくべきであろう。

溝上悠真による「Ephemeral Reverie」|作品解説

フロストの《Ephemeral Reverie》(2018)は、八坂の作品である楽譜作成指示を換骨奪胎する「演奏」から生じた楽譜=作品であった。八坂は実際にその土地を歩いた存在の痕跡として和声・テクスト・撮影された風景を楽譜化することを企図していたが、フロストは自らが行ったことのない土地を、オンライン上で完結する調査(google ストリートビューを用いた撮影など)から楽譜化した。八坂の関心がヴァーチャルな身体・生の立ち上げにあるとすれば、フロストの関心はヴァーチャルな土地=存在を取り巻く空間の立ち上げにあり、その後制作されたもっとも有名な作品である《Curling Music》(2022)における「カーリングの状況の再現」というテーマにも、同型の関心が見て取れるだろう。

西垣龍一とイザベラ・フロストによる「Ephemeral Reverie」|作品解説

イザベラ・フロストへのインタビューより、2026年9月10日、東京、聞き手・西垣龍一

西垣:あなたの作品の中には《Ephemeral Reverie》(2018)という、音楽と語り、そして大型スクリーンに映し出される映像がコラボレーションした作品もありますね。私は映像でこの作品を観たのですが、トーマス・アデスの《In Seven Days》を思い起こしました。スポーツとの融合、語りや映像との融合、といったふうに、近年はマルチメディアの音楽に取り組まれているのかな、とも思ったのですが。

フロスト:《Ephemeral Reverie》についておっしゃっていただき、ありがとうございます。この作品は、音楽と語り、映像が融合したマルチメディア作品であり、視覚的な要素と音楽的な要素が共鳴しながら表現されています。近年、マルチメディアの音楽作品が注目され、作曲家たちが異なるメディアや表現形式を組み合わせることで新たな音楽体験を創り出しています。トーマス・アデスの《In Seven Days》との関連性について言及していただきましたが、確かにその作品も音楽と映像が結びついた作品として知られています。マルチメディアの手法は、異なる芸術形式の要素を統合し、新たな表現の可能性を追求するための手段として採用されています。私自身、マルチメディアの音楽作品にも興味を持っており、異なるメディアが持つ表現力や相互作用を活かした作曲に挑戦することもあります。それによって、音楽がより豊かな視覚的・空間的な次元を持つことができ、聴衆により包括的な体験を提供できるかもしれません。マルチメディアのアプローチは、作曲家として常に新しい探求と創造を促すものであり、私にとって魅力的な表現手段の一つです。