馬場悠人

2001-  |  日本

馬場悠人による馬場悠人|プロフィール

2001年生まれ、学生、偽実験音楽史の受講生(シーズン2)。京都市立芸大近くの実家で育つ。幼少期に若き日の二瓶治荻屋晴夫と出会い、回想を残す。大学では食田奏太郎が紹介したハワード・ギルマンに関心を持ち、作品の新しい解釈を提示。

馬場悠人による二瓶治|回想と紹介

人物・来歴
大学進学をきっかけに上京することになり、初めての引っ越しをすることになった。片付けをしていたさいに引き出しから小学校の夏休みの絵日記が出てきた。

絵日記(2011年8月25日)
3年2組 馬場ゆう人
最近宿題ばかりしているので、遊びに行けません。なので、さん歩をよくします。近所のくつかけ公園にいつも会うお兄さんがいて、今日も会いました。お母さんと一しょに話しかけると、ピアニストらしいです。ぼくもバイオリンを弾くのでいつか一しょにひきたいです。

絵日記(2011年8月27日)
3年2組 馬場ゆう人
ピアニストのお兄さんに今日も会いました。びょう気をなおすためにいつもさん歩してるらしいけど、さん歩でなおるびょう気ってあるのかな。お母さんに聞いたら「よくわかんない」と言ったけど、先生は知っていますか。


ここに出てくる「ピアニストのお兄さん」とは​​ピアニスト・実験音楽作曲家である​​二瓶治で、私の愛読雑誌『Cōnātus』の創設者であり編集長も務める人物である。

幼いころからクラシック音楽の教育を受け、京都市立芸術大学ピアノ科を主席で卒業、しばらく修士課程に在学しながらプロの演奏家として生計を立てた。彼の演奏の特徴はどんな演奏でもさらっと味をつけずに弾きこなすことであった。彼は人々の間で熱烈な支持を受けファンも少なくなかったが、修士課程在学中、彼は自分の演奏の質素さはその音楽に全く興味を持っていないからだと気づく。その瞬間の衝撃を彼はこう書き残している。

「僕にとって演奏はスポーツでしかない。いや、スポーツ以前、あらかじめ決定されたトレーニングメニューでしかない。楽譜は指示書でしかない。それなのに興奮に顔を上気させて感動を伝えてくれようとする人がいる。お金を払う人がいる。僕のせいで音楽を諦めた人がいる。僕は詐欺師でしかない。」

修士課程を中退し、この一年後、彼はキャリアを引退し、二年間の隠居生活を送る。さらに交際していた女性が自殺し、彼は精神的なダメージを負うこととなる。大学時代の友人であった荻屋晴夫がこのことを知り、精神科の受診をすすめ、最終的にうつ病の診断を受ける。

この時に勧められたのが散歩療法であった。散歩をしながら、二瓶は町の中での音に注目するようになる。演劇家として活動していた荻屋からの影響で生まれたのが『街中の音楽』である。初演は荻屋が主宰する野外劇団『はるかぜ』のもとで行われた。『はるかぜ』は日頃から公園や広場などの野外で公演を繰り返しおこなっていた。
主な作品
《街中の音楽》(2009)
街中にあるものについて、その演奏方法が細かく定められている。例えば枝のつき方に従って木を叩いたり、交差点を通る車が曲がる方向によってある音高の声を出す、など。数十人の演者が同時多発的に同じルールに従って演奏を行う。
実施例
2009 年 10 月、東京都銀座の路上で初の公演が行われた。この公演には 38 人の演者が参加し、同時多発的に演奏を行った。演者たちは事前に細かく定められたルールに従い、それぞれの担当エリアで以下のような活動を行った:

●街路樹: 演者は街路樹の枝の配置に従い、指定されたリズムで枝を叩く。これにより、樹木の自然な音が一種のパーカッションとして使用された。

● 交通信号: 演者たちは交差点で信号の変わるタイミングに合わせて異なる音を発した。赤信号で低い音、青信号で高い音を出すことで、交通の流れが一つの音楽的なフレーズとして表現された。

● ビルの壁: ビルの壁に設置されたタイルのパターンを楽譜として読み解くルールが事前に与えられ、演奏者たちはそれに従って演奏を行う。

馬場悠人によるハワード・ギルマン|期末レポート

MITで音楽プログラムを担当していたハワード・ギルマンは、哲学・心理学研究者ネッド・ブロックの同僚で、Phenomenal consciousness/Access consciousnessの区別について直接的に本人から聞いていた。その中で、Access consciousnessを、音楽の偶然性を使って取り出そうという試みを始める。これは、主観的なクオリアの非クオリア化を期待するもので、意識のハード・プロブレムに対する解答を示そうとしたものでもある(ただしその意図が結実しているとは限らない)。日本では、食田奏太郎が雑誌のエッセイにおいて紹介をしたが、ギルマン自身が上記のような思想的背景を食田に伝えていなかったためにその部分は知られていない。以下のレポートは、馬場によるギルマンの研究である。
初年次ゼミナール期末課題.pdf