Kong Junxi(1964- )は、シンガポールの作曲家。一般には英語名のCarterとして知られる。幼少期は家が貧しく、車を所持していなかった。技能教育研究所(ITE)で日本語を学び、卒業後はホテルの従業員として働きながら資金を確保し、23歳で日本に渡った。そこで目にした日本の街を行き交う車の多さに衝撃を受け、それ以降、彼は日本の街に見られる交通をテーマに様々な音楽を制作した。
彼が初めて発表した作品が《five-lined road》(1989)である。これは片側三車線の高速道路のある瞬間を上から撮影し、道路を五線譜、車を音符として楽譜化を行なったものであった。この作品は日本道路公団の役員を務めていた
山中進(1921〜2006)の目に留まり、以降Carterは彼の支援下で楽曲を制作し続けた。2003年には山中家が所有していた別荘でコンサートが行われ、集まった観客が来場する際に通った道路において《five-lined road》と同様の試みが行われた。この時にできた《five-lined road 2》は後にメロディーロードとしてその道に設置された。《five-lined road 2》では、信号があることにより、車(音)が多い部分と少ない部分が存在しているのが特徴である。
2009年には交通と音楽との関わりへの関心から
二瓶治に誘われ、彼の《街中の音楽》に交通信号班として参加した。翌年《ガードレールミュージック》を共同制作。参加者が一列に並んでガードレール沿いを歩きながら、ガードレールに付着している汚れを紙に記録し、その後ガードレールの支柱から支柱までを1小節とみなし、記録した汚れを音符に置き換え、参加者全員の音を合わせるという手法で作曲を行った。《ガードレールミュージック》では、曲の後半になるにつれて音にまとまりがなくなっていくが、これは参加者が歩き続けて疲れてしまったからである。