道尾歩

1959- | 日本

bashi0880による道尾歩

道尾歩(みちお あゆむ、1959年1月6日 - )は、日本の社会学者、劇作家。
人物・来歴
1959年1月6日、東京都砂川町(現立川市)で生まれる。早稲田大学で社会学を専攻し、1970年代後半から1980年代初頭にかけて学生運動に参加。彼の社会学的視点はこの経験に大きく影響を受けている。大学卒業後、東京大学大学院で社会学の博士号を取得。彼の研究は、特に都市社会学と日本の社会運動に焦点を当てている。

道尾は1980年代に劇作家としても活動を開始し、社会問題を題材にした作品を多数発表。彼の初期の劇作品は社会学的洞察に富み、多くの批評家から高い評価を受けている。後期になると劇自体が社会を変革するツールとしてみなされるようになり、町の人々が劇に参加する手軽な手段として音楽を提案し、取り入れるようになる。音楽に興味を持つきっかけにはピアニストの赤慎吾との出会いがあるといわれている。1980年代後半、彼は赤とユアン・シーとともに遊歩(U-FO)としての活動を開始する。
思想
1980年代後半、道尾は「音楽参加型劇」という概念を打ち出し、観客を単なる受け手としてではなく、劇の一部として積極的に参加させる試みを始めた。彼は特に、地元の音楽グループやアマチュアのパフォーマーと協力し、地域社会の声を取り入れた作品を創作するようになる。これにより、劇場は単なるエンターテインメントの場から、コミュニティが共に考え、議論し、変革を目指す場へと進化した。

この新しいアプローチは、社会変革の一環として広く支持され、道尾の作品は全国各地で上演されるようになった。彼の代表作《変革の時》は、地域の若者が中心となって進める社会運動を描き、その過程で地域社会の連帯感を強化するものであった。この作品は、観客と出演者が一体となって社会の問題に立ち向かう姿を描き、多くの賞賛を受けた。

また、道尾は音楽を通じて劇のメッセージを広めることに力を入れた。彼は地元のミュージシャンと協力し、劇のテーマソングや音楽イベントを開催。これにより、より多くの人々が社会問題に対する関心を持つようになり、劇場の枠を超えた社会運動が広がった。

道尾歩の活動は、単なる芸術表現にとどまらず、社会全体に影響を与えるものであった。彼の劇作は、観客に深い思索を促し、地域社会の一体感を高めるとともに、社会問題への意識を喚起する重要な役割を果たしている。
主な作品
著作
《都市の社会構造と変遷》(1985)

劇作
・《真夜中の都市》(1982):都市の夜を舞台にした作品で、社会の裏側を描く。
・《叫び》(1987):労働者の権利をテーマにした作品で、社会的不正義に立ち向かう姿を描く。
・《分岐点》(1992):家族の崩壊と再生をテーマにした作品で、ジェンダーの問題を取り上げる。ジェンダーに関してかなり先進的な見方を示した。
・《変革の時》(1998):道尾歩が企画・演出した即興劇であり、音楽を通じて市民の意識を変革し、社会問題に対する共感と行動を促すことを目的とした。この劇は、特定の劇場ではなく、街中の広場や商店街など公共の場で行われ、通行人も含めた多くの人々を巻き込む形式で展開された。

シナリオの流れ
第一幕:プロローグ: 劇は、街中の何気ない会話を装って始まる。二人の声は次第に大きくなり、周囲の人々が注目し始めたころに最初のテーマの演奏が始まる。

第二幕:ハプニングの開始: 徐々に何人かの俳優が会話に加わり、社会的テーマに関する対話を開始する。初演では「都市の貧困とホームレス問題」が扱われた。俳優の中で楽器の演奏をする者が現れ、それも対話の一部として劇は進む。

第三幕:参加: 俳優たちが話し合う中、音楽が徐々に変化し、劇のテーマに沿った曲が演奏され始める。ここで、即興的に観客の中からボランティアが選ばれ、簡単な楽器(カスタネットやタンバリンなど)を渡され演奏に参加するように促される。

第四幕:クライマックス: 劇のクライマックスでは、俳優たちが観客を巻き込んで大きな議論を始める。道尾の指示により、劇のテーマソングが演奏され、歌詞がスクリーンや紙で配布される観客も歌詞を見ながら歌に加わり、音楽と演技が一体となる瞬間を迎える。この時、通行人も自然に劇に取り込まれ、全体が一つのコミュニティとして共感を共有する。

第五幕:フィナーレ: 劇の終盤では、俳優たちが即興的に解決策やアクションプランを提案し、観客とともに実際にできる小さな行動を話し合う。最後に、全員でテーマソングを合唱し、劇が終了する。


劇の影響:《街角の革命》が注目を集めたのは、当初の予想に反して通行人を含めた多くの観客が積極的に劇に参加し成功を収めたことによる。多くの観客がその場で署名活動やボランティアの申し出を行い、実際の社会運動へとつながるきっかけとなったと言われている。

広田依式による道尾歩|ツイート(2022年6月18日)

「道尾先生の論文集『都市の中にある芸術』、相当面白いな……と思いつつ読んでいる。特に「散歩の只中における鑑賞」がすごくいい感じがあるし、今構想している展示のアイデアともだいぶ絡む感じがある。」

「展覧会とか演劇とかを鑑賞する経験は、作者本人がその影響を排除しようとどれほど望んでも、最寄りの駅から会場へと歩いてくる経験と切り離すことができない。その結果として、自分の考えていたことを伝達するという作者の意図にノイズが生じ、」

「鑑賞者は作者が考えていたこととはあんまり関係ないことを好き勝手に考えるようになったり、あるいは、本来想定されてはいなかった場所との結びつきに基づいて、作品に新たな解釈を付与したりするようになる。そうした事態に政治的な可能性を見て……というもの。」

「道尾先生の伝説的な《変革の時》(もちろん生では見れてなくて、記録映像を見て戯曲やいくつかの批評・解説を読んだくらいだけど)では、もちろん鑑賞者・参加者を特定の方向にコントロールすることこそが重要だったわけで、考え重視するものを情況にあわせてだいぶ変化させているんだな、と。」
道尾の論文「散歩の只中における鑑賞——外を歩いて会場へとやってくる鑑賞者の「政治」学」(道夫の論文集『都市の中にある芸術』(2021年、水声社)に収録。初出は2016年)を読んだのちの、広田依式のTwitterアカウント:@depeformulaのツイート(21時32分-45分)