Speaking, Playing

Dolly Gilmour|1990

廣川開人による《Speaking, Playing》|解説

ギルモアは必ずカフェで実験音楽を作っており、様々なカフェを巡っていた。Freedomというカフェとの出会いがこの作品の誕生のきっかけである。そこではBGMとして音楽がかかっておらず、創作に集中しやすかったという(店内でBGMをかけなかったのは、コーヒーの味に集中できるようにという店主のコーヒーに対する並々ならぬ思いがあるからだった)。しかし奇妙なことに、店内でBGMがかかっていないにもかかわらず、ピアノが置いてあるのである。ギルモアが理由を尋ねたところ、店主は音大を目指したがピアニストの夢はあきらめたという過去があり、カフェを経営する一方で趣味として閉店後にピアノを弾いているのだという。興味をもったギルモアは閉店後に居残り、店主の演奏を聞いて感銘を受け、自分のつくる実験音楽をぜひ彼に演奏して欲しいと思うようになる。このような経緯で、カフェの中で交わされる会話を音楽化する《Speaking, Playing》を構想した。この作品では、何組が会話をしているかという数と音を対応させて、即興的に音楽をつくっていく。観客は自分が観客でありながら、自分が楽譜を規定している参加者でもあることを知らされない。